一言替えると、心が通じる

過日のある研修会でのこと。
ロールプレイング(役割演技)で、お客様とのやりとりを勉強していました。

研修をさせていただいた会社は、介護のお仕事ですから、
その場面でのお客様は、認知症のある方でした。

デイサービスでのこと。

そのお客様は、入浴を嫌がられているのですが、
なんとか、お風呂に入っていただきたいと、
スタッフのみなさんががんばっている場面です。

お客様 「今日は、お風呂に入らない。」
スタッフ 「そんなこと言わないで入りましょうよ。」
お客様 「いやだ、寒いし、入らない。」
スタッフ 「でも、お熱もないし、血圧も正常ですし。」
お客様 「いやだ。昨日入ったから入らない。」
スタッフ 「でも、ご家族の方も、お風呂に入ってほしいっておっしゃっていましたよ」

さて、ここまでの短いやりとりですが、あなたはなにかお気づきになりましたか?

こちらの施設に限らず、介護スタッフの皆さんとの研修では、
こんなパターンで、入浴をいやがられるお客様とやり取りする場面が、
ひんぱんに見られます。
(実際に、ロールプレイングでよく場面設定されるのです)

よ~く見ると、会話がかみ合っていませんよね?

認知症のお客様の場合、
こうすればよいという答えは一つとはいきませんから、
何が正解か不正解かということを考えるよりも、
少なくとも、この会話が、お客様のご意向をくみ取っているとは
感じられないということを感じとる必要はあると思います。

スタッフの、お風呂に入っていただきたい、という気持ちもとてもよくわかります。
結果的に何らかの方法でお入りいただくにしても、
会話の上で、もう少し、ご意向をくみ取れるようにしたいものです。

研修が終わって、ご担当の方とお話をしました。

ご担当の方「確かに、日常の中で、会話が、でも、から始まることが多いです」
三厨 「そんなかんじですね。でも、から始まると、打ち消しになっちゃいますものね」
ご担当の方「どうしたらいいでしょうか」
三厨 「接続詞を変える、ってことでしょうね」

さあ、

「でも」の代わりの言葉を探してみましょう。
コツは、直前の言葉を復唱してみればいいのです。

「そうですよね~。寒いと入りたくないですものね。」
や、
「そうでしたね、昨日もはいられましたよね。今日もいいお湯ですよ」
など。

ちょっと、会話らしくなりませんか?

サービスを提供する側が、
「しなければならないこと」を優先しすぎると、
お客様の気持ちに添わなくなってしまうことがあります。

しかし、スタッフにとって、ご家族もお客様、
ご家族のご意向に添うことも考える必要があります。

お風呂に入ってほしいというご家族のご意向に添いながら、
ご本人様の気持ちに添うこともできる、
そんなサービスの提供を目指していきたいものです。

介護のお仕事に携わっていらっしゃる皆さんは、
どちらの施設の方々も、
答えが一つでない中で、毎日一生懸命にお仕事をなさっています。
きっと、家庭で介護をなさっている方も、同じでしょう。

できるだけ相手の気持ちを受けとめる、
そんなやりとりを、試してみていただきたいと思います。

さて、こういったことは、介護の場面に限らず、あなたの身近でもありませんか?
相手との会話の中で、よくよく考えてみると、かみ合わないことってあると思います。

その原因の一つは、
自分の考えを押し通そうとするから、なのかもしれません。
まず、相手の意見を受け入れてみる。
そして、そのうえで、自分の意見を伝える。

上記の会話でいえば、もう一つのコツとして、
「~しなければならない」という押し付けよりも、
お客様が、思わず「~したい」と思ってしまいそうな会話になるように
持っていくことも大切なのかもしれません。

いかがでしょうか?

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