新入社員から「会社を辞めたい」と相談されたときに先輩ができる「たった1つのこと」

この春、大学を卒業して新社会人になった私の娘の話です。
半年ほど、リモート中心の研修を受けたり、配属先で実地研修をしたりする予定。
配属先の発表は、研修期間の真ん中ぐらいらしく、今はまだわかっていません。

 

入社から1か月ほどたったある日のこと、娘がこんな電話をしてきました。

「おかあさん、会社の人にこんなこと言っていいのかわからないから、確認したいんだけど・・・」

娘は心配性。
ちょっと不安げなこうしたフレーズで始まることは珍しくはないので、
今日はなにごとかな?と話を聞いてみました。

娘:会社から、配属先や配属されてからのことについて
何か不安に思うことや困っていることはありませんか?
って、アンケートが来たんだけど、
今は不安に思っていることや困っていることはないけれど、
配属されてから困ったことや不安に思うことが起きたら、
どうしたらいいんだろう、誰に聞いたらいいんだろう、って思うんだけど、
そういうふうに、アンケートに書いてもいいのかな、と思ってお母さんに聞いてみようと思ったの。

とまあ、こんな感じです。

これをお読みになった社会人の先輩である皆さんは、
それはその時に先輩や上司に聞くだけの話じゃないかー!って思われますよね。
確かにそうなのです。その通り、正解です。

いくら心配性の娘でも、そんなことはその通りだとわかっていますが、
それでも娘は心配なわけです。

 

娘のこうした取り越し苦労的な心配は、これまでにも珍しいことではありません。
「それでいいよ」とか「ここはこうしたほうがいいかもね」と言ってあげると、
安心して力を出せる我が娘とわかっておりますので、
私は「そんなことは、起きてから考えたらいいんだよ」とは言わず、
これまで、娘が安心するような接し方をしてきました。

ですから今回はこんな感じです。
私:そうか~
確かに、今は困ったことがなくても、これから先にあるかもしれないものね。
そういう時に、だれに聞いたらいいかわかっているほうが安心だよね。

娘:そうなのよ。だからそういうふうに書いていいのか、
そんなこと書いちゃいけないのか、わからなくって。
会社にいるときならいいけど、リモートだともっと困りそうだし・・・」

私「そうだね。会社にいるときなら、周りの人に聞けそうだけど、
リモートだと、そういうわけにもいかないものね。
それ、アンケートに書いていいと思うよ。書き方工夫してみたら~」

と言って、どんなふうに書くのかは娘が考え、それに対して少しアドバイスしました。
そうしましたら「ありがとう!」と納得して電話を切りました。

こうして一見細かすぎる?!ことでも、不安なことを確認しながら安心に変えて行動してきた娘ですので、
私は親として、これでいいと思っています。
このように見守っていましたら、こうしたことも頻度はだんだん減っていますし、
だんだん上手に対処できるようになってきたと思うからです。

 

娘にも、「だんだんうまくなってきているから大丈夫だよ」とも伝えています。
また、それは娘も実感しているようです。

さて、なんだか頼りない娘の話で恐縮ですが、
同じように不安に思っている新入社員の方も少なくないのでは?と思い、書いてみました。

娘がお世話になっている会社は、
入社前からも、何度となく困っていることや不安なことはありませんか?と聞いて
きめ細やかにフォローしていただいています。

 

しかし、困ることや不安なことは、おそらくこれから山のように出てくるのでしょう。
それを娘も予想しているだけに、誰に聞いたらいいのかわからなかったら
どうしたらいいんだろう、と不安に思ったわけです。

娘はどのようにアンケートに書いたかというと、
「今は不安や困っていることはありませんが、配属されてから困ったことがあったときに、
どなたに相談すればいいかが、あらかじめわかっていると、安心して仕事に取り組めると思います」
と書いたようでした。
アンケートに自分の気持ちをかけたことだけでも、おそらく娘は安心したと思います。

さて、私たちも新入社員だった頃のことを思い返してみましょう。
もう会社に行くのは嫌だーとか、つらくてやめたいーと思ったこと、
誰にでも一度や二度、経験がありますよね。

それを乗り越えてがんばってきたからこそ、
その先にある仕事の楽しさや誰かの役に立つ喜びを味わうことができたのだと思います。

しかしその楽しさや喜びは、経験したからこそ、がんばればその先にあるとわかりますが、
経験のない新入社員に、この話をしたところで、ピンとくるものではないでしょう。

それではどうしたらいいのでしょうか。

 

まず、「先輩、会社辞めたいんです」

って、相談してもらえる先輩は素晴らしいですね。

それくらい先輩のことを信頼しているということでしょう。

その信頼にぜひ答えてあげてほしいのです。

 

新入社員が「会社辞めたいんです」と相談してきたときに先輩ができるたった一つのこと。

それは、

「親身になって話を聞く」

ということです。

 

なんだ、そんなことか、それならもうやっているよ、と思われたかもしれません。

しかし、これに尽きるのです。

 

聴き方にはコツはあります。

こうして相談してくるときの新入社員の気持ちはどんなものなのでしょう。

もう全体に辞める!と思っていたら、おそらく相談しません。

相談するということは、本当に辞めたくないのかもしれません。

あるいは、引き留めてほしかったり。

 

つまり、

「辞めたいくらいの気持ちなんだ」

ということを理解して話を聴く、ということです。

「親身になる」とは、その気持ちを聴くということなのです。

 

「辞めたいと思うほどの気持ちなんだね・・・。何があったのか、よかったら聞かせてくれますか?」

と、話を聴く気持ちが先輩にあることを伝えましょう。

このようにして話をしてくれて、先輩が聴くことによって、

新入社員が思いとどまってくれたらそれでよしですし、

あるいは、先輩が何かできる問題解決の方法があるかもしれません。

 

さて、このように、もう「辞めたいんです」と相談してきたときにできることはこのたった一つですが、

「辞めたいんです」と言わなくて済むように、事前に準備して置けることがあります。

 

それは、新入社員が不安に思ったり、困ったり迷ったりしたときに、
「あ!〇〇さんに聞けばいいんだ!」
という人を作っておくということです。

 

相談できる先輩がいる人や

困ったことがあったら、相談しよう!と思える新入社員はそれほど心配はないでしょうが、

我が娘のように、「こんなこと相談してもいいのだろうか・・」とその段階で悩む人もおそらくいるはず。

ですから、そういう人のためにも、

「あなたが悩んだり困ったことがあった場合は、何でもどんなことでも〇〇さんに聞いてくださいね」

と「担当」を決めておくということです。

 

先輩が思っているよりも新入社員は小さなことで困っていたり悩んでいたりします。

しかしそんなときに、「〇〇さんに相談すればいいんだ」と思える人がいたら、

そして、自分のことを考えてくれる担当の人だったとしたら、

心強いこと、この上ないでしょう。

 

相談できる先輩がいて、その先輩が話を聞いてくれたら、
嫌なことがあったとしても解消されたり
会社を辞めたいと思ったとしても、思いとどまれることがあるのではないかと思います。

おそらく新入社員をご指導なさる皆さまは、
「不安なことや困ったことは、何でも相談してくれたら、いつでも話を聞くよ!」
と心構えをお持ちでしょう。

しかし「待ち」の姿勢だけでは、うまくいかない新入社員もいるものです。
我が娘のような心配性の人は、まず、「こんなこと、相談していいのだろうか」と考えるものです。
できるだけ、聞き出してあげるような「積極的な関わり方」が重要ということですね。

このように考えれば、新入社員の不安・困りごと・迷っていることを
いち早くキャッチして、その心配の種ができるだけ小さいうちに解決する、
ちょっとした工夫があるといいですね。

 

それはこんな流れです。
1.不安なことや困っていること、迷ったことなどがあったら、
どんな小さなことでもいいので、〇〇さんに相談してくださいと
「誰に話したり聞いたりしたらいいか、担当の人を明確にしておく」ことです。
これはマンツーマンがのぞましいでしょう。

2.上記が明確になったら、担当になった先輩は、
できるだけ新入社員に声掛けをして、
「いつも気にかけているよ」という姿勢を示しておくといいですね。

 

こうして少しずつ信頼関係を作ることで
新入社員は先輩に話しやすくなり、問題は小さなうちに解決できるはずです。
そして新入社員は会社や仕事に慣れ、やがて仕事の楽しさや役に立つ喜びを経験し、
仕事を通して成長していけることでしょう。

 

こうした取り組みは、新入社員や若手社員を育成する「ブラザー・シスター制度」といいます。
弊社のお客様でも、導入なさっている会社は、離職率の改善などでも大きな成果を上げていらっしゃいます。

しかし最初から制度導入と大きく構えなくても、
上記でお伝えしたように、まず「マンツーマンでなんでも話を聞く担当」を決めるだけでも
きっとうまくいきますから、ぜひお試しください。

「五月病」
という言葉が昔からあるように、長期の休み明けはちょっと不安になったり会社を辞めたくなったりするもの。
こんな時の「声掛け」は役に立つはずです。

新入社員の方はこれから本格的に仕事を覚えていきます。
この過程で、たくさんの壁にぶつかるでしょう。
自分で乗り越えて成長できるように、
困ったことがあったら、あの先輩に聞けばいいんだ!という安心材料をもって取り組めるとしたら、
どんなに心強いことかと思います。

それぞれが持ち味を発揮して成長するように、
先輩はいつも「心の距離」が近いところにいて、見守ってあげてください。